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いつも足を運ぶ公園
そこまで広い訳ではなく、遊具と言えば滑り台が一つあるだけ。
あとは僕が今座っている二人掛けのベンチのみ
まだ5時過ぎだと言うのに、僕の体温を奪うのには充分な気温だった。
両手を口許に近付け息を吹きかける
じん、とした暖かさ。しかしそれもまた冷えへと変わってしまう
情けないことに男にしては冷えやすい体質、いわゆる冷え性というものだった。
まだ誰にも言ったことはないけれど(馬鹿にされるに決まってる)
それより寒いなら帰れば良いじゃないか、
という声が聞こえてきそうだけどまだ帰りたくないのだ。
ただ、それだけ。
いよいよ辺りは暗くなり始め、明かりといえばこの公園にあるたった3つの街灯。
うすぼんやりとベンチと滑り台を照らしている
マフラーでもしてくれば良かったかなぁ、と些細な思いを頭にめぐらせ僕は目を閉じた
すると頬に変な感触。
「・・・・―熱っ!」
驚きに思わず目を見開くと、そこにはホットコーヒーの缶を持った見慣れた男
「よ。」
「よ、じゃないよ!何すんだ・・!」
「こんなクソ寒ィのに何してんのかと思って」
「火傷したらどうするつもりだよバカラス!ちょっとは考えろ」
「そんな文句ばっか言うなって。ほら」
「・・・いらない」
差し出されたコーヒーを断るとカラスは随分驚いた顔をしていた
・・・何だよ
「折角このイッキ様が買って来てやったのに」
「頼んでない」
「素直じゃねーの」
「関係ないだろ」
「・・・・・コーヒーが飲めないだけだったりして」
ぎくり
今の僕にはその擬音が物凄く似合っていたと思う。
半ば冗談で言って笑ったカラスが僕の方を見て再び笑った。今度はにやり、とだ
まるでおもちゃを見つけたこどものように(いや、それよりタチが悪いかもしれない)
僕の隣りにすとんと座りにやにやと僕の顔を覗き込んでくる
「見ないでくれる、バカラス」
「へぇ〜ウンコ目はコーヒーも飲めないのか〜へぇ〜」
「・・・・・・」
「お子様」
「う、うるさいっ」
「そんなムキんなんなって」
腹立つ。
こいつに子ども扱いされるなんて(一生の不覚だ)
仕方ないだろう、苦いんだから。僕には到底おいしいとは思えない
ブラックだか何だか知らないけど、飲める人の気が知れない
すると、顔の前に再びコーヒー缶が差し出される
「だから飲ま」
「・・・なくても良いから手でもあっためろよ」
言葉を遮られ、缶は受け取ることになり素直に両手で持つと温かさを実感する。
末端まで冷え切った僕の手は、たった一つのコーヒーが温めてくれた。
するとカラスは
「じゃぁ俺帰るわ、今度は紅茶でも買って来てやるよ」
と小さく笑いながら言って僕の隣りから去っていった
何だアイツ、これを渡すためだけにここに来たっていうのか
馬鹿にも程がある・・・・
姿が見えなくなってから僕はこっそりありがとう、と呟いた
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わーイキミツですって!まだラブじゃないお互いが少し気になるだけ。今後の伏線的なもので。
梶しゃまに捧げ、ます(ウワーイラネ!)
20041027